〇〇で十分、という話の違和感

最近見た「〇〇で十分」という話をふたつしたいと思う。
まずは「カメラなんかいらない、スマホで十分」という話。自分がみかけたこの話をしていた人は、それに「とか言ってるやつはスマホでこんな写真撮れるのか？」と付け加えていいカメラを自慢していたのだけど、これにはちょっと苦笑してしまった。

いうまでもないけど、いまどきのスマホはズームも広角もあるしレンズは明るくて暗所でもわりといい写真が撮れるなど、別にカメラを持ち歩く必要性が低くなっているのは事実だろう。
それでもたとえば一眼やミラーレスが必要というのは、シャッタースピードを自由に変えたいとかレンズを取り替えたいとか、そういった需要だろう。まあ、スマホにも外付けレンズをつけることもできるし、特殊な効果の写真などはアプリ次第で撮れるわけだし、なんなら星空だって撮れるのもある。
で、そのカメラ自慢の人はその星空を撮影してドヤってるわけなんだけども、そもそもいつでも身に着けてるものについてるおまけのカメラと、何十万もして何キロもある大きなカメラと三脚なんて全く別ジャンルだと思うんだよね。
多くの人はそんな高いカメラ買おうなんて思わないし、そんな重いカメラ持ち歩こうなんて思わないし、そもそも星空を撮りたいなんてあまり思わないし。たまたま持ってるこの電話機に、わりとよく写るカメラがついてるから、日常を撮影して投稿する文化が生まれただけで、誰もが写真が好きなわけでもない。
星空にしても多くの人は撮影しようとすら思わないし、そもそもそれがいいカメラだとしても山の上などにいかないとまともには撮影できないわけで、そこまでして撮りたいと思う人は少なくて当たり前だろう。
もちろんセンサーサイズやらなんやらで高いカメラのほうが画質はいいんだろうけど、高画質で撮ったところでスマホの小さい画面でしか見ないし、SNSは投稿したら圧縮されるし、我々の日常には必要ないものなんだよね。
このへんがいくら説明してもわからないというか、ただスマホのカメラで十分だと言ってる人を見下したいだけの人みたいで面白かった。
スニーカーで街を歩いてる人にアイゼン装備の登山靴をはいた人が「そんなんじゃ雪山登れねえじゃんｗ」とバカにするようなものだと思うんだけどね。いや、登んないからｗで終わる話が延々続いていたのだった。

さて、次が本題。
「軽自動車で十分」というお話。
これは自分から見ると本当に意味不明な話なのだ。カメラは高くて重いから必要ない、スマホについてるカメラで十分、というのなら話は通じる。スマホもまあ安くはないが、これとは別に10万も20万もするカメラは多くの人にとって必要ない。
車も、何百万もする高級車やスポーツカーなんかいらない、軽自動車で十分だという人がいてもまあ、わからなくもない。

でも、軽自動車って別に安くないんだよね。
いま一番売れてる車は、Nboxやタントのようないわゆるハイトワゴンと言われる背の高い箱型の軽自動車。これ、けっこういい値段するんだよね。カスタムモデルなら200万くらいする。普通のでも170とか平気でする。いや、そんなに出すなら普通車が買えちゃうじゃん？ノートやフィットやヴィッツのガソリンモデルならもっと安いよね。200近く出すならハイブリッドモデルが買えてしまうし、カローラフィールダーやセダンなんかも視野に入ってくる。

でも、軽が売れてるし、軽で十分という人がけっこうな数いる。
軽にした理由を聞くと「運転しやすい」「小回りがきく」「わりと広くて荷物が積める」「維持費が安い」などが上がるんだけど、これも正直思い込みだったり大した違いでなかったりするんだよね。
まず運転しやすいなんてことはないでしょう！軽いのに背が高いから風に流され易いし、とくにハイトワゴンなんかはひっくり返ってるのよく見るからね！
小回り？いや軽でないと曲がれない角とか行き違えない狭い道なんかこの日本にどれだけあるの？そういうところに住んでるの？
わりと広い？いや狭いっしょ。ハイトワゴンなんか背が高いだけだし、そんなに背が高い植木とか自転車を分解しないで積んだりする？てか荷物積んだら後ろにだれも乗せられなくなるよね。自分しか乗らないならそれでもいいけど、荷物より人乗せるほうが多くない？てか後部座席を倒して使うならコンパクトカーもけっこう荷物積めるしね。

維持費って税金のことだと思うけど、普通車と比べて年に２万違うくらいだよね。燃費も別に良くないし、まあ高速道路は安いかもしれないけど、軽で高速はちょっときついと思うんだよね。そんなに急がないなら大丈夫なのかもしれないけど。そもそも本体が高いんだから維持費が安くても意味ないよね。本体が50万高ければ税金が2万安くても意味ないもの。

とまあ、利点として挙げられる部分は実はたいした利点ではなく、なんとなく軽がいいと思って買ってる人がとても多いというのがわかる。
そして「十分」というには、まずコストが安くないと成り立たない。スマホより高いカメラを買う必要がないからスマホで十分、というように、高い車は必要ないから安い車で十分、というのはわかる。でも、軽って安くないじゃん！なんで高くて燃費よくなくて小さくてパワーない車をわざわざ買うの？？誰に聞いても全く答えを教えてくれない！

軽で十分、という言葉はミラみたいに80万くらいで買える車についてこそ言えるものだろう。たとえば、メインの車とは別に家族用の二台目だから安いのでいい、とか、原付でもいいけど屋根があったほうがいいから安い車でいい、とか。
というか、コストまで考えるならそれこそ中古車でいいと思うんだよね。少し古めなら低走行でもめっちゃ安いのあるし、車って走行距離で壊れるものじゃないから、ただ走ればそれでいいなら中古の普通車を買えばいいと思うんだよね。軽の新車との税金の差なんて何十年たっても埋まらないくらいの値段の差があると思うし。

でも、程度のいい軽は中古でも高いｗ
高くても売れるからだと思うけど、これも意味がわからないｗ

とまあ、この「軽で十分」という人は、けっこうな数いるはずなのに、誰も明確な答えをしてくれないのが面白いというか怖い。個人的な結論としては「よく考えないで、思い込みで良さそうだと思って買ってる」「普通車に乗ったことがないから比較できない」んだと思ってるけど、そうはっきり答えてくれる人などいるわけがないのがとっても不思議だと思う。