柴犬のblog

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混迷する携帯業界、NTTが他社を引っ張る異常事態

携帯料金の再編が進もうとしている。

そもそもの話として総理や総務大臣がいち民間企業に値下げしろなんて言うのは自由競争にもとる行為だと思うんだけど、もし談合とかカルテル?とかしてるならその方向で指導なり摘発なりするべきだと思うのだが、まあそれはおいておくとしよう。

まずahamoの衝撃は凄かった。いきなり楽天と同等水準に落として来たからだ。オンライン限定とか家族割キャリアメールなしという条件はあるものの、5分通話無料で20GBで2980円なんて、ほとんどの人が乗り換えてもおかしくない水準だろう。

個人的にはここまで安くするとは思ってなかったし、大手がその水準になるのは楽天のエリアがまともになって多くの人が乗り換えるような状況になってからだとばかり思ってたら、ドコモがまず楽天に追随するというのは本当に衝撃だった。

まあ、楽天は通話も通信も無制限なんだけど、やっぱりエリアが狭いしauエリアだと5GBまで、超えたら1Mbpsっていう制限があるから実質5GB2980円ってことになるんだけどね。エリアが広がったとしても20Mhz幅一つじゃCAも使えずエリアや通信速度に難があるし、バンド1が使えないとなると他社製のスマホがほとんど使えない状態になっちゃうしね。

 

で、このドコモ主導で時代が変わるというのは、NTT時代から考えてもなかなか斬新なのである。ドコモの料金自体は他社より決して高くはなかったのだけど、NTT全体的に独占欲が強すぎるというか、他社に門戸を開くということについてはとても腰の重い会社だった。

まずNTT。インターネット黎明期において、多くの人はアナログでダイアルアップしていた。速度は56kbps。いま思えばよく我慢できたなと思う速度だ。ISDNになっても64k。二本束ねても128k。ここでやっとギガが切れたときの速度と同等になる。

こんなんでは動画なんか見れないし、画像のあるサイトを開くのも一苦労だった。そこでNTTは全国に光ファイバーを張り巡らし、それでもってブロードバンドを占有しようと思ったわけだ。

でも全国にすでにある電話線、いわゆるメタル線に電話とは違う周波数を流して通信するADSLの技術が確立されていたのに、ADSLはやらずに光まで国民を待たせる政策に出た。そこで東京めたりっく通信という会社がいろんなところに掛け合ってメタル線の解放を認めさせた。

その後NTTもフレッツADSLを始めたし、ヤフーBBの台頭で全国にADSLが広まったのは有名な話である。そのパイオニアたる東京めたりっくは潰れてしまったけど、岩戸を開いたという意味では画期的なことだったと思う。

普通の会社なら自分の施設を使わせてやるなんて考えは起きないのだけど、NTTは元が国が整備したものだから、国民全体に使う権利があるという考えがあるので、その施設を正当な値段で卸し、その資産を国民に共有すべしというのは当然のことといえるのだ。

次にドコモ。今でこそ格安SIMは誰でも知る存在になっているけど、当初はそんなものはなかった。ドコモも実は電電公社時代から国が整備していたものだし、他社が参入しようにも電波に限りがあるから物理的に参入ができない。これでは独占となってしまうので、これも同じく回線を卸して使わせなければいけない。でも、その値段があまりに高くて商売にならなかったので、日本通信という会社がこれもいろいろなところに根回しして正当な値段で卸すようにした。

当初は格安SIMとはいえそんなに安くなかったし(ドコモの卸し価格のせい)、経費を削っていたからか回線品質もよくなかった。ドコモと同じエリアではあるけど割り当てられた回線容量より収容人数があまりに多くて使い物にならないレベルだった。いまでも昼とか夜中とかは使い物にならない格安SIMもあるけど。

でもいろんな会社が参入してきて、わりと使えるようにもなってきている。この格安SIMが成立するのは、キャリアたるドコモ自体の料金より圧倒的に安いからである。なぜ安くできるかというと、キャリアと違って格安SIM会社(MVNO)は設備投資も技術開発もする必要がなく、またキャリアより多くのユーザーを狭い帯域で使わせているからだ。

さて、NTTグループというのはNTT法という足かせもあったし、競争がされづらい状況にあったし、社風もまた独占を是とする感じではあった。他社に追随して値下げして常に最安レベルではあったけど、自分から率先して新しいことをすることはなかった。端末を持ち帰りゼロ円にして二年の割賦にしてその分を料金から引くシステム、いわゆるスーパーボーナスを考えたのはソフトバンクだけど、それをマネして月々サポートなんてのを作ったこともあった。

そんなドコモがついに自分から業界の壁を破ったというのがすごい点である。これはNTT(持ち株)がドコモを完全子会社にしたというのもあるんだろうけど、それにしても画期的なことなのである。

 

さてそのahamo、あまりに安くてそれ以外のプランが消し飛んでしまうレベルである。だって既存プランだと各種割引なしなら1GBで2980円なのだから!

新しいギガライトプレミアだと60GBまで6550円。3GB以下なら4880円。

60GBの料金はそんなもんかなと思うけど(家族割とか光セット割も効くし)、3GB以下の料金がやばいw ギガライトのほうなら3GBで3980円。うーむ、ahamoの20GB2980円というのがどれだけ異常に安いかがわかる。

この料金設定を見ていると、家族割とかキャリアメールが必須でない人ならたとえ3GBしか使わなくてもahamoを選ばない理由がない。家族通話無料がなくなるとしても5分まで無料だから日々の連絡には問題あるまい。ギガライトは1GBまででステップアップをしないこともできるようになったけど、それでも2980円も取られるんだからahamoにしない理由ってないんだよね。そんなに使わないといっても使っていいなら無駄に動画見たりアプリの更新したりするようになると思うし。なんなら光を解約する人も出てくるかもしれない。

それくらいアホみたいに安いのがahamoなんだけど、現時点で追随しているのはソフトバンクだけ。これはラインモバイルを吸収合併して社内ブランドとして行うとのこと。オンライン限定なども含めてahamoとほとんど同じコンセプトである。

ソフトバンク自体のプランも再編されていて、これもドコモのプランにそっくりだ。一年だけの割引をやめてシンプルにしてある。まあこれはいいんだけど、先に発表していたワイモバイルはどうなるの?って思っちゃう。20GBのプランもあるんだけど5000円近いんだよね。今までの常識でいえばそんなもんだと思うんだけど、ahamoが出た今となっては高いとしか思えない。もともとソフバンは大容量はソフトバンク、中容量、小容量はワイモバイルって住み分けしてたはずなんだけど、ahamo対抗プランができてしまうとこれらのワイモバのプランが全く意味を成さなくなってしまう。というか、存在意義が疑われてしまうんじゃないだろうか。むしろワイモバを廃してソフトバンクLINEモバイルの二本で行くのだろうか。

このへんはauも同じで、いちおうUQに安めのプランはあるんだけど、ahamoと比べると高い。そしてau本体のプランはドコモの既存プランより高いという始末。今後はahamo対抗プランを作らざるを得ないと思うけど、ahamoの存在は完全に想定外の出来事だったようで追随の発表はまだ未定中の未定のようである。

 

さて、そのahamo、自社プランなのにMNPが必要だったりファミ割が使えなかったりと不思議な仕様なのだけど、これは多くの人が指摘しているように「元々はサブブランドとしてやるつもりだった」のが正解だろう。でも総務相が「サブブランドで値下げしたからというのは不親切だ」と言ったことで路線を変更したのだろう。システムの改修が終わるまではMNP手続きが必要なのはそういうところにあるのかもしれない。

他社は自社サブブランドへの乗り換えの手数料をゼロにしたりとこの辺の批判をかわそうとする動きがあるけど、結局値段でahamoにかなわないのでサブブランドの存在意義を問われている状況である。

 

そしてプラン再編はまだ終わらない。ドコモは低用量プランについて「MVNOを含めた連携、対応をしていきたい」というようなことを言っている。つまり妙に高額な20GB以下のプランをどうするか問題である。

20GBで2980円なら10GBなら1500円くらいにしないとおかしいし、3GBなら300円とは言わないけど現実的な値として5~10GBで千円台のプランがないと理屈に合わない。いくらなんでも20GBなんてそうそう使えるもんじゃないし、それより下のプランも2980円以上するというおかしな状況になっている。

これをドコモはどうするのか。話をそのまま解釈すると自社で格安SIMを行うという風にも見える。そうなればそれこそ別ブランド、MNOによるMVNOという妙な状況になってしまう。が、これは別にそんなにおかしな話じゃなくて、同じNTTグループNTTコミュニケーションズのOCNモバイルを受け皿にするという手がある。OCNのプランはahamoほど安くはないが、これをahamoを基準に再編して10GB程度のプランを値下げして乗り換え易く案内するのではないか。そんな気がする。

もしくはソフバンみたいにOCNモバイルを吸収合併してしまうとかね。そうなったらまたahamoとは別のブランド名がつくのかもしれない。エンタメフリーとかMNOにはないサービスがあるのも魅力となるかもしれない。

個人的にはYouTubeが見放題で千円台なら考えちゃうなーって感じはする。でも20年以上使ってる身としては契約年数がリセットされるのは抵抗あるし、その辺がネックになってくるんじゃないかと思う。

まあドコモがそういう長期ユーザーに忖度して完全自社内プラン、契約年数長い人になんらかのサービスをしたり、せめてリセットしないで利用できるようにしてくれればこれは相当に化けると思うんだよね。

とくにあのソフバンが後追い、auに至っては全く想定もできず追随するとも言えない状態であることを思うと、ドコモのスタートダッシュは相当に強いものになるんじゃないかと思う。

最近ドコモのシェアは一時期ほど圧倒的じゃないけども、これでまたドコモ一強の時代になるのかもしれないね。